子どもたちの健全な咬合育成を行う歯科医師団体

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第15回子どもの咬合を考える会特別講演会Q&A

   

先の子どもの咬合を考える会特別講演会では、多くの方々にご参加頂きまして誠にありがとうございました。
時間の都合上、質問事項に関しましてはホームページに掲載とのご案内とさせて頂きました。
回答が出来上がったものから順番にアップして行きますので、定期的にHPをチェックして下さい。

Qダウン症の小児の場合、舌を出している児をよく見かけるが、岡崎先生は原因を何と考えますか。
Aダウン症児が口を開けるのは、まず全身の筋肉の低緊張だと思います。
それゆえ舌が肥大しているから見えやすいと思います。
もちろん咀嚼筋群や口輪筋など顔面表情筋の弱さも一因です。
よく見ていると下顎前突の子ほど舌筋が弱いためか言葉が遅いようです。
また舌が上がらないことが高口蓋の原因となりますし、この事は鼻腔底も高いことを暗示し、鼻呼吸が困難になり口呼吸にもつながると思います。
基本的に舌が見える子は、口呼吸をしています。(岡崎)
Q脳血管障害で、寝たきり経鼻栄養児(小5)の摂取の希望で、何から始めればよいか。VFも必要ですか。間接訓練からと思うのですが。
Aこの状態は、ピンからキリまでいるので何とも言えません。一人一人対応が異なります。
事故につながるのでコメントは難しいです。
ただ個人的には5年生だったら前歯部の突出、開口や高口蓋などさまざまな骨の問題が表れていると思います。
口唇閉鎖の不全などの、ひずみが次々と問題を引き起こします。
だからこそ早期からの摂食訓練が必要だと思います。
私は顎や歯列の変形を治す程腕が良くないからこそ、そのような状態にならない幼児期にスポットをあてることが大切です。 (岡崎)
Q食べる意欲のない子どもへの対応方法は?
Aそりゃあ空腹感を与えることでしょう。(岡崎)

食べる意欲のない子どもへの対応は、年齢によっても違うと思います。
乳児期から哺乳の意欲の高い赤ちゃんとあまり飲む意欲がみられない赤ちゃんがいるようで、食に対する意欲はもともと個人差があるようです。
さらに食べる意欲の発達は環境からの影響を大きく受けるため、年齢が上がると食べる意欲のない子どもでは、様々な「食べ方」の問題が出てきます。
生活面、機能面、心理面の様々な状況が関連するため、食べる意欲のない子どもへの対応も子どもの発達状況や生活環境を踏まえた対応が必要です。生活面では生活リズム(食事、睡眠など)の不規則や運動不足、間食や甘味飲料(場合によっては牛乳でも)の摂りすぎなどが食欲の低下を招きます。また機能面では咀嚼機能の未発達や食形態の不適、心理面では食の強要や親の対応(食卓の雰囲気)などが食べる意欲に関連が高いようです。
食べる意欲を育てるためには、以下のような対応が考えられます。(井上)

・哺乳期:空腹のサイン(泣き声)をうまく受け止めてもらい、授乳によって空腹が満たされることで吸啜行動が発達する。

・離乳期:家族と一緒の食卓で食べることで食べ物への興味が生まれ、周囲の人たちとの関わりが「新しいひと匙」を受け入れる意欲を育てる。食形態のステップアップを急ぎすぎない。

・幼児期前半:「手づかみ食べ」は食べる意欲の表れでもあるので積極的に行わせる。また食べこぼしながらも自分で食べることで、自食行動が育つ。乳歯が生え揃うまでは食べにくい食材が多いことを踏まえて、食形態を調整する。「眠る」「食べる」「遊ぶ」「排便する」という生活行動を子どもの生体リズムに合ったものにして、活発に行動する意欲を育てる。

・幼児期後半:「買い物」「食事づくり」「食卓の準備」などを一緒に行うことで、食べ物や食事に対する興味を育て、食事に気持を向けていく。また一緒に食べる人達(家族や友達)との「おいしさの共感」や「楽しく弾む会話」がこころと身体の満足を生み、食べる意欲を育てる。
Q子どもに甘い親、おじいさん、おばあさんなど食育はその家庭を巻き込む必要があると思うが、どうしたら上手くいくでしょうか?
A先ずは甘い親、祖父母に今の食生活の問題点、食作法の乱れを理解いただくために話し合うことをすべきです。
今のままでは可愛い子/孫がちゃんと育たないことを、順序立てて話せば合意いただけるはずです。
心身の成長発育にも大切だし、正しい食の在り方を身につけさせることで子どもなりの感性が身に付くことも理解しましょう。
Q新生児(赤ちゃん)の舌小帯の短いケースはどうされますか?切るか切らないか?助産師、小児科医はこの頃あまり切らないように聞きます。
A仰る通りここ50~60年前より出産時に産科の先生も舌小帯を切ることはしなくなっております。
しかし吸啜時の機能向上のためには切除すべきです。
従って舌小帯強直症で吸啜に支障を来している時は、手術を専門医にて受けるべきです。
ただし、機能的に問題があっても生命保持には支障なければ、小学高学年頃になってから舌訓練(MFT)を習得させた上で舌小帯切除術をすればよい
Qすでに1~2歳から乳歯の叢生、交叉咬合などの不正咬合がみられますが、こういう小さい子どもに対して矯正治療は無理なので、何かアドバイス出来ることがあるか(生活習慣)?
A先ずはその原因を見出し、それを止めさせるべきです。
この場合うつ伏せ寝が考えられます。
機能的には舌の動きを活発化させることです。
よく噛ませること、よくおしゃべりをさせること、行動を活発化することです。
Q拡大装置やムーシールドを入れる時間が短くなかなか進まない方がいる。装置を入れてもらうためにどのような工夫があるのか?
A子ども(本人)への動機づけをしっかりやりましょう。
それと親への絶対的な理解と信頼関係を創っておくことが大切です。
口の中に大きな装置を入れるのですから、大半の子どもは嫌がって当然です。
それなりのアプローチに工夫をしなければなりません。
Qどうして固いものを食べると虫歯や歯周病になりにくいのですか?
A固いものは一般的に歯に付着しない物です。
それに嚥下するまでにそれなりの大きさまで噛み砕かなければなりません。
その間に唾液の分泌が増し、自浄作用が増すと共に、口腔内の酸度を下げ作れるからです。要は唾液の働きです。
Q最近軟食化のために顎が小さくなったという話を聞くことが多いが、裏付けするデータはあるのか?
A 「軟食化のために顎が小さくなった」という話題は昭和50年代から言われ始め、「かまない(かめない)子どもが増えている」という話題とも重なって社会的にも注目を集めました。また、顎と歯の大きさのディスクレパンシーから歯列不正が増えてきたということも昭和50年代ごろから話題になっています。
歯科の領域で乳幼児の口腔機能発達に目がむけられたのも、このような話題に対して示せるデータがなかったためともいえます。

それまで「咀嚼」に関しては基礎でも臨床でも、獲得された機能としての咀嚼運動がとりあげられており、吸啜から咀嚼への移行や小児期の咀嚼機能の獲得にはあまり目がむけられておらず、歯学教育のなかでもとりあげてこられませんでした。
小児歯科の分野でも、当時はう蝕の蔓延に目がむけられ、咀嚼の発達をはじめとした口腔機能発達に関する研究はほとんど行われていませんでした。

前述の話題が社会的にも注目されたのを機会に、歯科(とくに小児歯科や矯正歯科、口腔衛生など)の領域で乳幼児の口腔機能発達に関するいろいろな調査、研究が行われ、少しずつデータもたくわえられてきました。
私どもの教室でも、保健所を中心とした乳幼児の摂食状況に関する調査や歯列・咬合の発育状態に関する調査、さらには乳児期の歯槽弓の発育に関する研究などを行いました。

他大学での研究の結果なども合わせて乳幼児期の摂食機能の発達や歯列・咬合の発育との関連などはかなり解明されてきましたが、顎が昔に比べて小さくなっているかどうかについての研究は個々の大学レベルでは難しい状況でした。

そこで日本小児歯科学会が学会としての見解をまとめる形で示したのが「近年増加傾向がみられるディスクレパンシーは、顎が小さくなっているためではなく、歯のサイズが大きくなっているためと考えられる」というものです。

骨の成長は遺伝要因に加えて栄養や運動などの環境要因が関連しますが、咀嚼運動量の低下だけで顎骨の狭小化が生じるとはいえず、栄養状態がよくなって身長が伸びている現状では顎骨の成長だけがマイナス方向になるとは考えられないし、セファロデータなどでも狭小化は立証されず、むしろ歯冠サイズの増加傾向が示されたことからの見解でした。

また、「かまない(かめない)子が増えている」という話題も、食事の軟食化やファストフードの蔓延からかまなくてもすむ食事が多くなったり、運動不足などの生活状況から食欲が低下して食べ方の問題が生じやすくなった面と、幼児期の摂食機能への理解不足から機能に合わない食形態の食事が提供されていた面が原因として考えられ、この対応も少しずつ整理されてきています。

ちなみに、無歯症で咀嚼障害のある子どもでは、歯胚のない部分の歯槽骨の発育はみられませんが、顎骨の発育は比較的順調に起こります。
ただし摂食障害があって全身の骨の成長が不良な障害児では、顎骨の成長も影響を受けて小さくなるようです。
食育が推進されている現状の中では、顎の成長のためというより、口腔と全身の健康のために「よくかむこと」を推奨していきたいものです。(井上)
Q一歳未満の子どもの口腔内写真、模型はどこでとられたのか。
A1歳未満の子どもの口腔内写真は、私の姪や教室員(おもに以前の)のお子さんのものです。
外来にも乳児が来院することはありますが、先天歯や哺乳障害などの問題をもったお子さんがほとんどですので。
また、口腔模型は現・昭和大口腔衛生の向井教授が私どもの小児歯科にいた頃、教室員とともに自分のお子さんや母子保健院(「離乳の基本」などで有名な二木武院長のころ)の乳児院で印象をとらせてもらったものです。
各個トレーを作製して印象をとるのもなかなか大変な仕事で、大学院生の学位論文になっており、また私どもの教室の貴重な資料になっています。(井上)
Q口唇閉鎖力を客観的にはかる方法.きたえる方法を教えてほしい。
Aパタカラの製造元である株式会社パタカラよりビューティーヘルスチェッカーが発売されています。
口唇閉鎖を行っている10秒間での最大値、最小値がN(ニュートン)で数値化されます。鍛える方法としてはパタカラによるトレーニングが効果的ですが、ペットボトルを口唇でくわえるなどのトレーニングも有効です。
Q食事中の口唇閉鎖が重要だが、口呼吸の常習者,鼻閉により口呼吸をしているものにとって、口唇閉鎖は困難なことと思う。このような子どもたちに、どのように指導すればよいか。
Aまず、日常生活での口唇閉鎖を意識させることが大切です。
鼻閉については程度によるのですが、軽いものであればブラックガムなどのミントの強いものを噛むとか、メンソレータムのようなものを鼻に塗布することでも改善することがあります。

さらに鼻翼の外側にあるツボを刺激することによっても改善が見込めます。
また鼻閉はアレルギー性鼻炎によるものが多く、口呼吸によって喉のリンパ組織であるワルダイエル輪を傷め、免疫機能がオーバーフローすることによりさらに鼻炎を悪くする悪循環の側面もあるため、鼻呼吸への転換は非常に重要といえます。
ただ強度の鼻閉の場合、耳鼻科の対応が必要となります。
Q食べる時の姿勢の指導はどのようにしたらよいか?
A食事中の姿勢は身体的にも影響し、体内に入った食べ物が胃で消化されるためには、胃を広く働きやすい状態にしてあげることが必要です。
それには背筋が伸び、美しい姿勢であることが大切!
背中を曲げて食事をすると、胃は押しつぶされ十分に働くことができません。
良い姿勢は日々の習慣から作られ、身についていくものです。

・背中はピンッと伸ばそう!
・イスは奥まで深く腰かけよう!
・お腹とテーブルの間にこぶし1個分あけよう!
・足は床につく高さに調節しよう!

テーブルが低い場合、足をつけることで体も安定します。
肘の高さがテーブルの高さの目安 正しい姿勢で食べるための環境を整える必要があります。
足は地面に付く状態で、テーブルの高さはひじの位置くらいである必要があります。猫背は口呼吸の習慣と大きくかかわり、口唇の閉鎖が必要になります。
鼻呼吸をおこない、口を閉じて左右バランス良くかむことは、美しい姿勢のためにも重要です。
Qよくかむために具体的に噛みごたえのある食品を教えていただけますか。料理、おやつなどおすすめのものがあればお願いします。
A食物は咀嚼を行うことによって無理なく飲みこめる状態になります。
そのために食品によってかむ回数は大きく異なります。
代表的なものを挙げますと、

・いわしの丸干し194回、
・せんべい162回、
・くるみ108回、
・フランスパン108回、
・にんじんスティック100回、
・かりんとう98回、
・こんぶ85回、
・きざみキャベツ85回、
・いかリング76回、
・きのこソテー75回、
・焼き豚75回、
・かまぼこ75回、
・皮つきりんご74回、
・食パン/耳あり62回、
・ビーフステーキ62回、
・あじの開き60回、
・フライドポテト60回、
・たくあん59回、
・野菜いため52回、
・食パン/耳なし52回、
・焼きとり50回、
・ハム48回、
・こんにゃく48回、
・プロセスチーズ47回、
・えびフライ46回、
・ブロッコリー42回、
・ご飯41回

といったところです。ちなみに

・バナナでは7回

になります。(可食部10g当りの咀嚼回数)

食物の噛みごたえといえば硬いものを連想しますが、あまり硬いものは現代人の顎ではオーバーロードになりかねず、より回数を噛まなければ飲み込めないものと考えられればいいのではないかと思います。
かむ回数についてはひと口30~50回が望ましいといわれていることから、食物の選択もそれに見合ったものを考えられればと思います。
Q1口サイズなど覚えたい時期を体験不足のため逃してしまった子どもが、取り返せる方法はありますか?
Aまずは咀嚼回数の増える食材を工夫して与え、しっかり食物の咀嚼、嚥下を丁寧に教え込むことが大切でしょう
Q乳幼児の歯科検診で口腔機能をチェックする基本的な項目、口唇の形態、舌の動きなど具体的に教えて頂きたい
A年齢によりチェックできる項目は変わると思います、授乳時期なら舌小帯、上唇小帯の強直が乳首への吸綴に影響が出ますのでこの時期での切除も必要になることもあります。
睡眠時の口唇閉鎖がなされているかも大切です。
正しい鼻呼吸ができているかも大切です。 舌小帯の強直は、舌根沈下の原因にもなります。
Q離乳期の手づかみ食べにはどういったものが適当ですか?
A手づかみできるものなら何でも、よいのではないのでしょうか。
ただし、本人や周囲の汚れには、配慮がいります。
Q母乳を「子どもが納得するまであげたい」といわれるが、2,3才を過ぎても飲んでいる子どもに対してのアドバイスをとまどってしまうことがある。歯科の立場ではどのようなアドバイズがよいか。断乳が大幅に遅れるとどんな不正咬合になりますか?
A子どもの自立ということからも、自分で立って歩き始める頃の断乳が大事でしょう、歯科的には、断乳の遅れが直接不正咬合になるとは、考えられません。


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